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ピアノ妖怪 1章

小村治は生まれながらにして盲目の男であった。生まれて直ぐに親に捨てられ、十五歳になるまで孤児院で育てられたが、規定の年齢に達するよりも早く独り立ちする機会に恵まれたのは、小村が盲である点をメリットとして着眼してくれる事業主と偶然に出会ったからであった。

その人が経営しているのは、遠心的な技法で按摩技術を施すことが売りの本格的な方針を持つマッサージ店だったが、本物の三療師を雇うと賃金が高くつくうえ、自負の強い人が多いので扱いにくい。その点、小村のような男は賃金が安くつくし、ただ盲というだけでなんとなく説得力がつき、いい客寄せになっているようだった。

小村はただ仕事があるというだけで満足をしていたが、まだ小村が孤児院で世話になっていた頃、手が不自由なのにノーベル医学賞を受賞した医者のことや、視覚と聴覚を失ったのに教育家として名を残した女性のこと、それに四肢と言語障害を抱えつつも大きな功績を残した物理学者の話をきいたことを小村は今でも覚えている。

小村は思う。そういった人達の存在は希なのだろうし、彼らはたしかに体に障害を抱えていたかもしれないが、なにも自分のように赤子の時点で親に捨てられたわけではなかったではないかと。書物に記された伝記を聞かされている限り、彼らはせめて誰かの愛情ぐらいは知っている人たちばかりではないか。

小村の日常は、時折夜の寝床の中で出口のない迷路に睡眠を妨げられる生活で成り立っていた。親が自分を捨てた理由や、自分が生まれてきた理由について考え出すと、朝まで眠れないどころか、一時はもはや死んでしまった方が楽なのではないだろうかと思えたぐらいだった。

だが死のうと考え、その方法を具体的に目の見えない頭部を用いて模索するたび、どこからともなく力のようなものが胸にみなぎり、過酷な運命に立ち向かう決意だけを遺しては、なぜか生への執着ばかりが首をもたげてくるから不思議だった。

――ある日、生活物資を買うために外へ出た際、交差点で信号を待っていると、ふと声が聞こえた。

「青になったよ、早く道をわたりなさい」

「はあ、どうも、ご親切に」

しかしクラクションの音に危うく路肩へとはじき飛ばされ、小村はその場に尻餅をついた。

「……赤じゃないですか。どこの誰が何故そんな危険な嘘を私に?」

盲人をからかって愉しめる輩がいることは知っているし、小村もそういった手合いを相手にするのは慣れっこのはずだったが、この時ばかりは違った。

本当に命の危険を覚えた。

「どこの誰だか知りませんが、殺すおつもりだったのなら、本当に殺してしまいなさいな。なら、こちらもせいせいするんですから……」



続く。
次回アップロード予定日は未定。連載のペースをお約束ききず、誠に申し訳ございません。近日中に公開致しますので、もうしばらくお待ち下さい。作者。



ピアノ妖怪の続きだよ ケケケ


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