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鎌鼬と野槌と に参加中!

――続き。

ある日、ショウを観に来ていた彼女が劇の合間にこんなことを言った。

「ねえ、赤レンジャーさん。前から2番目の列で手を振っている茶色い目の男の子、あの子って可愛くなぁい? あたし、次はあの子が欲しいわ」

「欲しいといったって、あの子はよその家の子供じゃないか。ほら、横で汗を拭いてあげているのがきっと母親だよ」

「あこがれの赤レンジャーとこっそり待ち合わせの約束をすれば、子供は親の目を盗んででも抜け出してくるわよ。あたしは赤レンジャー様の奥さんとして、彼を旦那様の元へ連れてかえるわ」

「旦那さん……ヌフフ」

「私はあなたと子供を持ったような生活を味わえればそれで満足するの。すぐに帰してあげるわ。あの子だって、赤レンジャーと親子のように一緒に居られるのだから、皆が幸せになる話なのよ」

「僕は君と一緒に暮らせるというのかい」

「そうよ。毎日夢のような快楽を与えてあげるわ。だから言うことをお聞きなさい」

「はい」

また違うある日――。

「ねえ、次はあの髪の赤い子がいいわ。ああいう女の子も一度育ててみたいの」

「……いい加減にやめにしないかい。これでもう3人目だ。子供は皆よろこぶどころか怯えている」

「あら、誰よりも愉しんでいるのはあなたのはずじゃない。子供が怯えて見えるのはあなたの力不足のせいよ。ヒーローのくせに面倒見が悪いのを人のせいにしないでちょうだい」

「……」

――

「前回ショウを観にきたとき、別の子を連れているのをみかけたけど、あれはどこの子供なんだい?」

「あら、あたしの仕事はベビーシッターなのよ。余所の子を連れていて何か不思議なことがあるのかしら」

――

「最近はあまり一緒に居てくれなくなったけれど、僕に何か不満でもできたのかい」

「いいえ別に。ただ、猛烈レンジャーの放映はもうすぐ終わるそうね。それに、テレビのニュースが最近やかましいの。猛烈レンジャーの恰好をしている男が、デパートで子盗りを繰り返している可能性が高いんですって」

「……」

――

「テレビで観たよ。ウルチョラマンの中身を演じていた男が、数件の子盗りを遺書にのこして自殺をしたんだって」

「あら、そう。その内、猛烈レンジャーの中身も同じように自殺をするのかも知れないわね。ウケケ」


かめんらいだ


見るに見かねたカマイタチが彼女をいよいよ斬りつけたのは、その夜の事だった。人の中に巣食う妖怪は、のちに鼬だけでなく生けとし生きるもの全ての存在を脅かしかねないのである。

カマイタチに斬りつけられた人間は、次の満月の日まで生死の間をさまよい続ける。その身に宿した妖怪が息絶えるのが先か、あるいは宿主の命が尽き果てるのが先か。それは鎌鼬にもわからないし関心を持ち合わせていない。ただ、人の中に救う妖怪を人と同時に斬りつけるのみである。

三日三晩生死の間を彷徨ったあと、女は病院のベッドの上で目を覚ました。

「…………君はいったいいつからこんなことを繰り返しているんだい」

警察に付き添われながら、そばにいる俵田少年はたずねた。

「ここはどこかしら」

「病院のベッドだよ。さらった子供達は一体どこへ……?」

「私はもう死んでいるはずなのに。子供ができない体とわかったとき、川へ身を投げて死んだはずなんだから」

「その姿……本当の君は一体何歳なんだ」

「十九よ。そんなことよりも、ねえ、あなた、聞いて。あたしのおなかに赤ちゃんがいるみたい。あたしには判るの。きっと、あなたの子供にちがいないわよ。これも、たくさん赤ちゃんを食べてきたおかげね。血のように赤い顔をしているわ。そう。あなたが被っていた赤いマスクのように」



ケケケ



♪怖い話集「かまいたちとノヅチと」  不定期更新