26大阪福島(キタ圏内)にある豚の鍋とやきとん串がおすすめのグルメな居酒屋「とん彩や」スタッフが描いている不動産ものミステリーっていうか、サスペンスの挿絵。山林分譲や底地買い、国土法逃れの手口等、経済もの小説の要素も濃くあり、ピカレスク的風合いも色濃い小説。その挿絵。昏き貌の赤い文字バージョン

大笑いをしている岡崎測量士の横で、本宮忠が時計を見ながら号令をかけた。

「さあ、歩を進めようか。日暮れまでに戻るには、今のピッチのままでは間に合いそうにない」

標高五百メートルにも満たない山とはいえ、人の寄りつかなくなった山道を歩くにはひときわ苦労が要た。風切りの山は正式な地名を東長池といい、その名の通り、山の真ん中には東西に大きな沼が這っている。株式会社アクティーが所有している土地はその北側に位置し、敷地は三千坪に及んでいる。

舗装された道が敷かれているのは山の入り口までで、そこから先はただバラスが撒かれただけの道とも言えぬ路がかろうじて山の中腹まで続いている。土地の権利が証券のように取引されていた時代に、ただ分譲するのに便利なよう敷かれただけの道だった。

息一つ乱さずについてくる藤谷令子に本宮忠社長は言った。

「なあ令子君。以前、この一帯を住宅地として販売する目的でニュータウン開発が計画されたが、それは近隣住民からの反対により頓挫したと君にも話したろう」

「ええ確かにそう伺いましたわ本宮社長。父のおかげで損をさせられた人が大勢いたことも存じておりますし、叔父様がその中の一人に該たるということもよく心得ております」

「おいおい、俺は損をしただなどこれっぽっちも思っていないよ」と本宮は顔に木漏れ日を浴びながら笑った。「だが、最近はつくづく痛感するよ。時の流れというのは恐ろしいものだと。なにせニュータウン開発ラッシュが起こる以前は、この山にも森林組合の管理による夏草の下刈りや間伐、枝打ちなど、何かにつけ人の手が入っていたものなのだ。だが今はこの有様ときている」

「と、仰いますと?」

「当時起きていたあの現象の正体を紐解けば、あの反対運動は単にこういった山を仕事場に生きている人たちが自分たちの利権を守るために起こしたデモ活動に過ぎなかったのさ。結果、彼らの要求どおりにニュータウン開発の計画そのものは頓挫した。だがその後、名義ばかり新しい持ち主となった人たちは、森林組合に金を払ってまで山の管理を委託しようという気にはならなかったらしい」

「考えてみればそれも道理ですわ。だって、証券的な意味合いで土地の権利を購入した人たちにしてみれば、山そのものの価値になどそもそも興味なかったのでしょうから。損をさせられたあと、更に山の管理費を支払えだなど、素直に従うはずがありませんもの」

「当然のことなのだが、そこが盲点だった。目標が大きすぎたせいか、欲に目が眩んだのかどうかは知らない。彼らはここに赤松を植林し、松林に仕上げマツタケの栽培を行おうと躍起になっていた。もともとは杉や樫の木といった、建築用の木材に向いた木ばかりが生えていたのだが、海外からの輸入により、安い材木がいとも容易く手に入るようになりだした頃、林業の存続を危ぶんだ人たちの手によりこの辺りの木の生態に手が加えられたのだ」

「マツタケですか」

「そう、マツタケだ。季節が季節だし、山がこのありさまだから、残念ながらお目にかかれそうにないがね。辺りにはツツジやコナラといった邪魔な木々が地面を覆っている。亡くなった藤谷社長も、この山を手に入れた当時は、いずれこの伊賀上野をマツタケ山の名所として世に売り込むのだと息巻いていたものだが」

「はあ、あの父がですか」

「義兄――つまり君の父上も、最初はこの山に随分と投資をしたものさ。だが、やがて気がついたのだ。この山を管理していた森林組合の人たちに上手く踊らされているということに」

「しかし、叔父様が仰っていた話によれば、父はここを博打で勝った借金の肩に手に入れたわけでしょう。それで一体どうやってうまく踊らされるというのです?」

「義兄はもともときこりを生業にしていた人だ。それが山を売り買いして金を握るようになった。山の仕事の甘いも酸いもよく心得ている。ただ、ブローカーまがいのことをして永く続けていけるとも思ってはいなかったのだろう。だからこそ、真の意味で宝のなる山を手に入れたいと願っていた。そういうことなんじゃないかな」

「はあ」

いまいち要点を得ない様子の藤谷令子に本宮は言った。「いやすまない。ここを歩いていると、つい昔の義兄のことを思いだしてしまった。特に、まだ若い頃の義兄との間に抱えた些細な柵のことを」

「マッタケどころか、ここの陰気さといえば、死体の一つや二つ埋められていたとしても何ら不思議はない雰囲気だ」と、うしろで顎をあげながら本宮慎一がぼやいている。

そのとき急に空が暗くなり、辺りの木々に雷鳴が轟いた。

 雨が葉を打つ音がしとしとと鳴り始め、まるで森が泣いているかのようになった。

――続く

つづき(ジャンプしない場合は更新はまだだよ~♪)

ひとつまえの話

♪不動産サスペンス「昏き貌」目次 火曜日にかろうじて更新



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