良心

とん彩や名物
グルメ刑事の居酒屋事件簿:第1話
五つ星殺人事件★★★☆★
166回目の更新

 
「その汗の一滴。お前にはまだ良心が残っているようだ。そして罪悪感も」
「どいてください」
久留米を肩ではねのけて、店の鍵を開けようとする氷室。
「今ならまだ間に合うぞ。俺がお前の懺悔を聞いてやろう」
「ハ、ハ、ハ」と高笑いする氷室。「映画やテレビの観すぎでしょうに」
「ここに一通の逮捕状がある。これがどういう意味かお前には理解できるか」
「……」
「今日の昼一番で請求をだし、今しがた俺の手に渡ったところだ。これによると、大阪府警はお前の身柄を拘束することを許可すると記されている」
「ふうん。何を根拠に?」
「今自白するならば、権利の読み上げはひとまず差し控えてやっても構わないが」
「自白しようにも、私は逮捕されるような罪など一つも犯してはいませんよ」
「では尋ねるが、貴様が遠藤酒店に発注した生ビール用の炭酸ガス……。通常なら1か月に1本ないし2本の納品で事足りていたものが、去年の九月と今年の十月に限り、通常よりも2本づつ多く発注および納品されているが、これらの用途は?」
遠藤商事から取り寄せた、氷室のサイン入りの納品伝票の束を見せる久留米。
「そんなものに何の意味があるというのです。ビールがたくさん売れれば、それに比例してガスも必要になってくる。ただそれだけのことですよ」
「だが、これら納品伝票の束によれば、去年の九月と今年の十月、フーディングバー・オーロラに通常よりも多くの生ビールが納品された事実は確認できない」
「あるいは、ときおりガスと生ビールを繋ぐホースの継ぎ目からガスや生ビールが少しずつ漏れてしまうという事態が発生してしまいます。そのせいで通常よりも早くガスを消費してしまい、結果的に発注が余分にかさんだのかもしれません。原価があがるので気を付けてはいるのですが、よくあることなので……」
「当初俺は北海道にいるはずのお前が、大阪にいる被害者橋本真梨子を殺害した方法として、ドライアイスに着眼したのだ。だがよく考えてみれば、二酸化炭素でできている物質は、なにもドライアイス一つではない。お前のように酒を売っている飲食店ならば、もっと身近なところに、炭酸ガスというものがあった」
「……」
「これを使い、バルブの解放程度を巧みに調節すれば、十月十三日の土曜日の夜、橋本真梨子が帰宅する頃合いを狙い、室内に二酸化炭素を充満させておくことが可能だ」
店の出入り口を背に、後ずさりする氷室。
逃走ルートを捜そうとしているのか、だが、辺りを見回すと、麗子さんや本部長らが辻の向こうで退路を塞いでいる。
「十月十三日の土曜日――。前日までに致死量の炭酸ガス10キロ分が入った緑色のボンベを普段取引をしている遠藤酒店から余分に取り寄せたお前は、これを自宅に隠しておき、橋本真梨子と二人で空港へ出かける際、バルブを緩めて二酸化炭素が徐々に室内で噴射されるように仕向けたのだ」
久留米が用意していた炭酸ガスのボンベのバルブを緩めると、シューと音が鳴りだした。
「中身が満タンの状態だと、どう緩めても音がなるため、おそらくお前は忘れ物をした振りでもつくろい、一旦自宅内に戻り、バルブを緩めたに違いないだろう。だが長時間噴射し続ければ、徐々にボンベ内の気圧は減少し、音も緩やかになる。橋本真梨子が帰宅するまでの九時間、ないし日曜の早朝頃までを視野に入れ、室内にて常に二酸化炭素が供給され続けられるようバルブを調整し、加えて室内の換気装置を全て停止状態にしておけば、窓を開けることのない十月の夜の環境の中、外気の混入は極力抑えられた状態となり、室内の二酸化炭素は常に致死量を維持し続けていたに違いない。そして、それはお前にとってはすでに実験済みのことであり、その被験体こそが被害者の飼っていた猫、まんまちゃんだったというわけだ」
店の出入り口に背を向けた格好のまま、うしろ手で扉の鍵をあけていた氷室は、オーロラの店内に逃げ込み、扉の鍵を閉めた。
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大阪福島区(福島駅)のグルメな豚肉料理居酒屋"とん彩や"

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安くて美味いの代名詞♪
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2014年2月の店休日はこちらとなっております。
肉のマークの日がお休みとなってございます。

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